日本の、ある章
東京都
62の町や村。順位ではなく、ただ並んでいる。まだ、行ってない町がある。
- 青ヶ島村 地熱が地面から滲み出る場所で、人は塩をつくるんですよね。
- 昭島市 多摩川の左岸から、拝島ねぎや多摩川梨を並べた直売所の棚を眺めていると、この土地がふだんの暮らしをちゃんと持っている、ということがわかるんですよね。
- あきる野市 秋川渓谷の水音が、ふだんの暮らしにすっと混ざってくる場所なんですよね。
- 足立区 隅田川と荒川のあいだに、ぺたんと平らに広がっている土地なんですよね。
- 荒川区 旧三河島汚水処分場の煉瓦造りの建物が、住宅街のなかにひっそりと残っているのを見つけると、この土地が歩んできた時間の長さに、すこし、はっとするんです。
- 板橋区 中山道の宿場町として人が行き交っていた道筋が、いまも板橋区の骨格にひっそりと残っているんですよね。
- 稲城市 多摩川沿いの梨畑が、住宅地のすぐそこに残っているんですよね。
- 江戸川区 小松菜の畑と、金魚の養殖池が、住宅街のすぐそばにある、というのが江戸川区のふだんの顔なんですよね。
- 青梅市 多摩川が山から台地へ流れ出すちょうどその折り目に、青梅という町はあるんですよね。
- 大島町 野増の都道沿いに、地層がむき出しになった崖面があって、バウムクーヘンとも呼ばれるその断面を前にすると、この島が火と時間のうえに立っていることを、あらためて実感するんですよね。
- 大田区 工場の金属音と、初詣の鈴の音が、同じ区のなかで鳴っているんですよね。
- 小笠原村 おがさわら丸が港を離れてから、次の陸地まで丸一日以上かかる、というのが、この島の距離感なんです。
- 奥多摩町 町域のほとんどが山林と秩父多摩甲斐国立公園に覆われているというのは、数字で見ると驚くんですけど、実際に奥多摩駅を降りてみると、その数字がそのまま体に届いてくるんですよね。
- 葛飾区 柴又帝釈天の参道を歩くと、和菓子の店先から甘い匂いが漏れてきて、なんだかふだんの歩き方より、すこしゆっくりになるんです。
- 北区 飛鳥山の丘の上に、晩香廬と青淵文庫が、静かに並んでいるんですよね。
- 清瀬市 畑の土のにおいが、西武線の改札を出るとすぐに鼻に届く気がするんです。
- 国立市 大学通りのイチョウが、台地の上に格子状の空をつくっているんですよね。
- 神津島村 赤崎の岩礁に足をつけると、黒潮の海の透けかたが、ふつうの海とちがうんですよね。
- 江東区 砂町銀座の商店街を歩くと、ふだんの買い物の空気がそのままそこにあって、なんだかほっとするんですよね。
- 小金井市 玉川上水のほとりを歩くと、江戸のころから水を引いてきた石組みと、いまも葉を茂らせる木々が、ごく自然に隣り合っているんですよね。
- 国分寺市 崖線の縁に立つと、足の下から水がにじみ出てくるのがわかるんですよね。
- 小平市 玉川上水の水音が、いまも遊歩道の緑のなかにひそんでいるんですよね。
- 狛江市 多摩川沿いを歩いていると、川の向こうにマンションが見えて、足元には土の匂いがあって、なんだかふしぎな場所だなあと思うんですよね。
- 品川区 戸越銀座商店街を歩いていると、コロッケの匂いと、話し声と、ゆるやかな坂の起伏が、ぜんぶ一緒くたになってやってくるんですよね。
- 渋谷区 スクランブル交差点の信号が青に変わる瞬間、あの交差点には何百人もの人がいっせいに動き出すんですよね。
- 新宿区 新宿駅の改札を出るたびに、どこへ向かえばいいか、すこし迷うんですよね。
- 杉並区 古着屋の軒先と、どこかのスタジオから漏れてくるアニメのセル作業の気配が、同じ路地に並んでいる、そういう場所なんですよね、杉並って。
- 墨田区 江戸切子の切り口みたいに、この街は光の当て方でまったく違う顔を見せるんですよね。
- 世田谷区 下北沢の古着屋の軒先と、成城の静かな坂道が、同じ区の地図に並んでいる、というのがまず、おもしろいんですよね。
- 台東区 雷門の大提灯の下を、人の流れがほとんど川のようにして通り過ぎていくんですよね。
- 立川市 立川うどを使ったラーメンが、ふつうにメニューに並んでいるお店がある、というのが、この街のおもしろさを言い当てている気がするんです。
- 多摩市 谷戸の起伏が、計画された街のグリッドをすこしだけ乱していて、それがいいんですよね。
- 中央区 日本橋の石畳の上に、いまも国道路元標が埋まっているんですよね。
- 調布市 深大寺そばの湯気と、角川大映スタジオの古い壁と、國領神社の千年乃藤と、この場所にはそういう「長い時間」がいくつも重なって、ふだんの路地に静かに溶け込んでいるんですよね。
- 千代田区 大手町の地下、深くまで掘り下げたところから湧き出るナトリウム塩化物強塩温泉が、SPA大手町として使われているんですよね。
- 豊島区 いけふくろうの石の頭を、待ち合わせのついでにそっと撫でていく人がいるんですよ。
- 利島村 椿の実が搾られる音、というのを想像してみると、この島のことが少しわかる気がするんですよね。
- 中野区 中野ブロードウェイのエスカレーターを上がると、まんだらけの棚がぎっしり続いていて、なんというか、ここはずっとこういう熱量の場所だったんだなあ、と思うんです。
- 新島村 白いガラス質の砂が、素足にじゃりっとくる感触から、この島のことを考えはじめるといいんです。
- 西東京市 武蔵野台地のほぼ中央に、石神井川と千川上水が静かに流れていて、そのそばにふだんの暮らしがそっと重なっているんですよね。
- 練馬区 石神井公園の三宝寺池のほとりに立つと、都心からひと駅ふた駅の場所とは思えない静けさが、そこにあるんですよね。
- 八王子市 甲州街道が市の南北を貫いていて、その道沿いにいまも宿場町の骨格が残っているんですよね。
- 八丈町 八丈富士の裾野から、観葉植物が緑のまま育つのを見ていると、ここが東京の離島だということをすこし忘れてしまうんですよね。
- 羽村市 多摩川の水を江戸へと引いた羽村堰のそばに立つと、川と人の付き合いがずいぶん長いんだなあ、とじんわり感じるんですよ。
- 東久留米市 落合川のほとりに立つと、足元からひんやりした空気が上がってくるんですよね。
- 東村山市 西武新宿線の窓から見えてくる景色が、ある駅を過ぎたあたりから、すこしずつ空が広くなるんですよね。
- 東大和市 狭山丘陵のふちを歩いていると、東京にいることを、すこし忘れそうになるんですよね。
- 日野市 多摩川梨の畑が、住宅地のすぐ脇に残っているんですよね。
- 日の出町 スギとヒノキの林が、平井川沿いにしずかに続いているんですよね。
- 檜原村 秋川の支流をたどって檜原街道を奥へ進むと、村の域のほとんどが林野で、集落はその隙間にそっと置かれているんですよね。
- 府中市 馬場大門のケヤキ並木を歩くと、根元の太さが、ここに積み重なった時間のぐあいを、そのまま教えてくれるんです。
- 福生市 嘉泉や多満自慢を醸す酒蔵が、基地のフェンスのすぐそばに建っているんですよね。
- 文京区 坂を上るたびに、すこし景色が変わるんですよね。
- 町田市 町田駅で二本の路線が交わるところから、この土地のおもしろさは始まっているんです。
- 御蔵島村 定期船が着くかどうか、出発の朝まではっきりしない、そういう島なんですよね。
- 瑞穂町 箱根ケ崎駅の改札を抜けると、東京狭山茶やシクラメンの紹介が小さなコーナーに並んでいて、ああ、ここはちゃんと農のある町なんだなあ、と気づくんです。
- 三鷹市 禅林寺の境内には、太宰治と森鷗外、ふたりの文豪が並んで眠っていて、毎年六月十九日の桜桃忌にはひとが集まってくるんですよね。
- 港区 大倉集古館の石畳を踏みながら、国宝の器や絵をふだんの午後に眺められる、という感覚が、この街の手触りをよく表しているんですよね。
- 三宅村 くさやの匂いは、一度嗅いだら忘れられないんですよね。
- 武蔵野市 吉祥寺駅の改札を出ると、すぐそこに本屋があって、ちょっと先に公園があって、井の頭自然文化園がある、という具合に、「行く場所」が自然に積み重なっているんですよ。
- 武蔵村山市 狭山丘陵と武蔵野台地のちょうど境目に、この町は立っているんですよね。
- 目黒区 目黒川の川沿いを歩くと、台地の縁がゆるやかに落ちていく地形に気づいて、なんだか地面の記憶を踏んでいる感じがするんですよね。