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この場所の物語
大学通りのイチョウが、台地の上に格子状の空をつくっているんですよね。国立駅から歩き出すと、大正時代の学園都市計画がそのまま地面に残っていることに、すこしおどろく。一橋大学の煉瓦塀に沿って散歩しながら、谷保なすや多摩川梨を売る農家の看板を見かけると、整備された文教都市の皮膚の下に、もっと古い土地の記憶が生きているんだなあ、と思う。
崖線をひとつ下りると、風景がまるっきり変わる。谷保天満宮の境内には湧水があって、段丘の上の暮らしとは別の、ゆっくりした空気がある。小松菜やほうれん草の畑が広がる農耕地は、都内にいることをしばらく忘れさせてくれる。くにたちワインや日本酒「谷保の粋」が地元の土からつくられているのも、この崖線の上下で重なりあう地形のおかげなんだと思う。
PC一台で仕事をする人が国立駅のそばに部屋を借りても、谷保天満宮の例大祭や朝顔市のリズムが、ふだんの暮らしにちゃんと入ってくる。外から来た人が「学園都市」という言葉だけで想像するものより、もうすこし土くさくて、もうすこし奥行きがある、そういう町なんですよね。
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