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この場所の物語
飛鳥山の丘の上に、晩香廬と青淵文庫が、静かに並んでいるんですよね。渋沢栄一がここで過ごした時間が、庭の石や煉瓦の壁にそのまま残っていて、博物館というよりも、誰かの家を訪ねてきたような、ちょっと不思議な気持ちになります。
紙の博物館では、王子製紙の流れを汲む製紙産業の記憶が丁寧に展示されていて、近代日本がどんなふうに動き出したのか、足元から感じられるんです。都電荒川線に揺られながら、その沿線に暮らしを置いてみると、明治期の産業の息づかいが、ふだんの散歩道にしみ込んでいることに気がつきます。
荒川と隅田川が分かれる岩淵水門のあたりは、水と土地の関係がとても素直に読めて、縄文時代の中里貝塚まで視野に入れると、この低地と台地の境目が、ずっと昔から人の暮らしを引き寄せてきた場所だったんだなあ、と思います。渋沢史料館でひとつひとつの展示を追っていると、近代日本の産業化がどこか遠い話ではなく、この丘の上で考えられ、動き出したことがわかって、いいなあ、と静かにうれしくなります。
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