日本の、ある章
和歌山県
30の町や村。順位ではなく、ただ並んでいる。まだ、行ってない町がある。
- 有田川町 有田みかんの皮を剥くと、指先に油分がのこる。
- 有田市 箕島漁港から揚がる太刀魚が、銀色に光りながら市場に並ぶ朝の空気は、ちょっとほかとは違うんですよ。
- 印南町 かえる橋のカエルたちが、黒潮に向かって口を開けているんですよね。
- 岩出市 根来塗というのは、黒い漆の下地に朱を重ねて、使ううちに朱が剥げて黒が出てくる、あの塗り方のことなんですよね。
- 海南市 黒江の町を歩くと、漆の匂いというよりも、時間のかさなりみたいなものをふと感じるんですよね。
- かつらぎ町 山と山に挟まれた盆地の空気は、夏になると熱をためこんで、その寒暖差が柿や桃をゆっくりと甘くしていくんですよね。
- 上富田町 富田川沿いに梅やみかんの畑が続いていて、ボタン製造の工場もちゃんとある、というのが上富田町のふだんの顔なんです。
- 北山村 村域のほとんどが山林で、川沿いのわずかな平地に人の暮らしが寄り添っている。
- 紀の川市 あら川の桃が、こんなにも種類豊かに棚に並んでいるんですよ、めっけもん広場には。
- 紀美野町 棕櫚箒の柄を握ると、その重さがちょうどいいんですよね。
- 串本町 橋杭岩が海から突き出しているのを、朝の光の中で見ると、なんだかこの町の気質そのものみたいだなあと思うんです。
- 九度山町 柿の郷くどやまの産直市場に、富有柿が積まれている光景を見ると、この土地の時間の使い方がすこしわかる気がするんです。
- 高野町 八葉の峰に囲まれた山上の盆地に、117の子院が肩を並べている。
- 古座川町 古座川の川面に、ときどき途方もない岩が現れるんですよね。
- 御坊市 金山寺味噌の甘い香りと、漁港から運ばれてくる潮の気配が、同じ町の空気に混ざり合っているんですよね。
- 白浜町 黒潮が岸に近い土地は、空気のぐあいからしてちがうんですよね。
- 新宮市 熊野川が海に溶け込む手前で、町はゆっくりと息をしているんです。
- すさみ町 海底に、郵便ポストがある、というのがすさみ町らしくて、いいんですよね。
- 太地町 熊野灘に二股の崎として突き出した地形が、この町の気質をそのまま表しているような気がするんです。
- 田辺市 湯の峰温泉の湯は、世界遺産に登録された温泉として、訪れた人がそっとその事実を確かめるように手を浸す、そういう場所なんですよね。
- 那智勝浦町 朝の勝浦漁港に、マグロが揚がってくるんですよね。
- 橋本市 紀ノ川が東西に細く流れ、山がその両側からぐっと迫ってくる地形を見ると、この土地がずっと「通り道」であり続けた理由が、なんとなくわかる気がするんです。
- 日高川町 紀州備長炭の煙が、森のどこかからゆっくりのぼってくるような町なんですよね。
- 日高町 阿尾漁港の朝は、船が戻ってくる音から始まるんです。
- 広川町 堤防の石積みを指でなぞると、そこに誰かの判断と手仕事の重さがあるんですよね。
- みなべ町 梅の木が、山の斜面をどこまでも埋めているんですよね。
- 美浜町 道成寺の境内に入ると、石畳の上に松の影がゆっくり落ちていて、なんだかふだんとすこし違う空気があるんですよね。
- 湯浅町 古い木の建物の隙間から、ふいに醤油の香りが漂ってくる、そういう路地なんですよね。
- 由良町 白崎海岸の石灰岩は、遠くから見ると白く浮き上がって見えるんですよね。
- 和歌山市 ぶらくり丁の古いアーケードを歩くと、シャッターと開いた店とが、ふしぎな割合で並んでいるんですよね。