日本の、ある章
愛知県
54の町や村。順位ではなく、ただ並んでいる。まだ、行ってない町がある。
- 愛西市 水の底に眠るような低地に、レンコン畑がずっと続いているんですよね。
- 阿久比町 丘と谷がゆるやかに重なる地形の中に、阿久比川がすっと南北に流れていて、その沿道を歩くと、なんとなく文章の一節みたいな景色が続くんですよね。
- あま市 五条川の水面を渡る風が、田んぼの匂いをすこし運んでくる、そういう午後がここにはあるんです。
- 安城市 明治用水が引かれて以来、この土地の水田は岡崎平野の中央でずっと稼いできたんですよね。
- 一宮市 朝のコーヒーカップの前に、トーストやゆで卵がそっと並ぶ。
- 稲沢市 植木や苗木がそこかしこに根を張る濃尾平野の真ん中で、稲沢という土地はふだんの暮らしと古い時間をそのまま並べて置いているんですよね。
- 犬山市 木曽川が濃尾平野へ向けてひろがっていく、その折り目のような場所に、犬山の町はあるんですよね。
- 岩倉市 五条川の水が、春ののんぼり洗いで鯉のぼりをゆらす。
- 大口町 五条川のほとりに、桜の木がずらりと並んでいるんです。
- 大治町 赤紫蘇とモロヘイヤが畑に育つ、平らな土地なんです。
- 大府市 大府駅のホームに立つと、東海道本線と武豊線がここで分かれていくのがわかって、なんだかちょっと、交差点の真ん中にいるような感じがするんです。
- 岡崎市 八丁味噌の蔵が、矢作川のほとりにいまも静かに立っているんですよね。
- 尾張旭市 愛知県森林公園の木立のなかを、散歩しながらPCを抱えている人がいる、そんな風景がごく自然に似合う場所なんですよね。
- 春日井市 サボテンの実生苗が、住宅地のそばで静かに育っているというのが、春日井のふしぎでいいなあと思うところなんです。
- 蟹江町 河川がいくつも束になって、北から南へ、伊勢湾へと流れていく。
- 刈谷市 工場の敷地と住宅地が、ほとんど壁一枚で隣り合っているんですよ。
- 蒲郡市 三河湾に向かって、山がすこし開いている。
- 北名古屋市 西春駅の改札を出ると、名古屋の空気とはすこし違う、田畑のにおいがまじった風が来るんです。
- 清須市 枇杷島駅のホームに立つと、名古屋の空気がもうすぐそこにあって、でもここはまだ、宿場町の記憶を地面の下に持っている場所なんですよね。
- 幸田町 筆柿って、ふつうの柿とはすこし形がちがう、細長いあの柿のことなんですけど、それをこの町がほぼ独り占めするように作っているんですよ。
- 江南市 五条川の桜並木を歩いていると、川沿いにそっと続く道が、ふだんの散歩と花見の境目をなくしてくれるんですよね。
- 小牧市 高速道路と幹線道路が幾重にも交わるその真ん中に、小牧山という丘がぽつんと立っていて、そこが織田信長の築城地だったというのが、なんだかこの土地の気質をよく表しているんですよね。
- 設楽町 面積のほとんどを山林が占めていて、豊川や天竜川の水系がそこに細かく入り込んでいる、そういう土地なんですよね。
- 新城市 豊川の水音と、山の稜線が空に刻む輪郭。
- 瀬戸市 尾張瀬戸駅の駅舎が、登り窯の形をしているんですよ。
- 高浜市 屋根の上に、鬼がいるんですよね。
- 武豊町 味噌蔵の建物をモチーフにした地域交流施設のそばを歩くと、醸造の匂いが、どこかふだんの空気に溶けているんですよね。
- 田原市 電照菊の光が、冬の夜のビニールハウスをぼんやりと照らしている。
- 知多市 岡田の路地を歩くと、知多木綿の問屋だった建物が、今もそのまま街角に立っているんですよね。
- 知立市 あんまきの甘い香りが、東海道の古い記憶とふだんの暮らしに、すっと混じり込んでいる土地なんですよね。
- 津島市 越津ねぎの甘みや鮒味噌の深みが、この町のふだんの食卓をひっそり支えているんですよね。
- 東栄町 鬼面を模した駅舎から降り立つと、町域のほとんどが山林だということが、空気の手触りでわかるんですよね。
- 東海市 鉄と土と、それからフキの青さが、この町の奥行きをつくっているんですよね。
- 東郷町 愛知池のほとりで、オールが水を切る音を聞いたことがあるんですよね。
- 常滑市 黒板塀と土管が積み上がった坂道を歩いていると、足もとの土がずっと昔から焼かれつづけてきたんだなあ、と思うんですよね。
- 飛島村 干拓地の上に、農村と工場が、ごく自然に並んでいるんですよね。
- 豊明市 桶狭間古戦場伝説地の案内板のそばを、ふだんの買い物帰りらしい人が自転車で通り過ぎていく、そういう土地なんですよね。
- 豊川市 豊川稲荷の参道を歩くと、線香の煙と、どこかの店先から漂う大葉の青い匂いが混ざり合って、ふしぎな組み合わせだなあと思うんですよね。
- 豊田市 五平餅を焼く煙が、香嵐渓の石畳にゆっくり溶けていく、そんな午後がここにはあるんです。
- 豊根村 村域のほとんどが山地で、集落のすき間から茶臼山の稜線がのぞいている、そういう土地なんですよね。
- 豊橋市 大葉とうずら卵が、ふだんの食卓にこんなにそっと届いているんだなあ、と気づくのは、三河港のそばを走ったときだったりします。
- 豊山町 頭上を、飛行機がほんとうに低いところを通っていくんですよね。
- 長久手市 リニモが丘陵の上をすべるように走って、車窓から池と雑木林がかわるがわる見えるんです。
- 名古屋市 朝、きしめんの出汁の匂いが漂う駅の構内を、スーツ姿の人たちが足早に歩き抜けていく。
- 西尾市 抹茶の産地であることと、譜代城下町であることが、おなじ町に同居しているんですよね。
- 日進市 赤池駅の改札を出ると、地下鉄とも私鉄ともつかない、すこし不思議な乗り換えの気配があって、それがそのまま日進という町の手触りを教えてくれる気がするんですよね。
- 半田市 半田運河のそばに蔵が並んでいて、その黒い壁のあいだをすり抜けると、ミツカンの酢の匂いがかすかに漂ってくるんですよね。
- 東浦町 入海神社の境内の下に、縄文の貝塚が静かに眠っているんですよね。
- 扶桑町 守口大根というのは、ほんとうに細長い野菜なんですよね。
- 碧南市 九重みりんの甘い蒸気が、古い蔵の隙間からにじみ出てくるような町なんですよね。
- 南知多町 豊浜漁港の直売施設には、朝のうちから水産加工物が並んでいて、買い物というより、海の仕事の続きを見ているような気持ちになるんですよね。
- 美浜町 東と西、どちらを向いても海がある、というのは、ちょっとふしぎな立ち位置なんですよね。
- みよし市 三好池のほとりで、カヌーを漕ぐ人の声がぽつぽつ聞こえてくる、そういうふだんの午後がここにはあるんです。
- 弥富市 養殖池の水面に、金魚がひらひらと泳いでいる。