日本の、ある章
静岡県
35の町や村。順位ではなく、ただ並んでいる。まだ、行ってない町がある。
- 熱海市 走り湯の洞窟から、今日もお湯が湧いている。
- 伊豆市 独鈷の湯の石畳を歩くと、足もとから温もりが伝わってくる感じがして、ああ、ここはずいぶん長いあいだ、人が湯に入りにきた場所なんだなあと思うんです。
- 伊豆の国市 狩野川の水がゆったりと田方平野を抜けていく、その流れのそばに、旧石器の頃から人が住みついてきた土地があるんですよね。
- 伊東市 城ヶ崎の溶岩台地がそのまま海に落ちていくような地形を、はじめて目にしたとき、この土地の成り立ちをからだで理解する気がするんですよね。
- 磐田市 ヤマハ発動機の工場と、奈良時代の国分寺跡が、おなじ台地の上にある、というのがおもしろいんですよね。
- 御前崎市 遠州のからっ風が、海側から一気に吹き抜けてくる。
- 小山町 棚田の水が、富士山の裾野からゆっくりと湧き出ているんですよね。
- 掛川市 掛川茶の畑が牧之原台地の西側にひろがって、その緑のあいだを新幹線がすっと通り抜けていく。
- 河津町 河津川のそばを歩くと、川端康成が『伊豆の踊子』に書いた七滝の水音が、いまも変わらずそこにあることに気づくんです。
- 川根本町 川根茶の香りが、山の湿った空気にすうっと混じる、そういう場所なんです。
- 函南町 丹那牛乳のことを、ここへ来るまで知らなかったんですよね。
- 菊川市 深蒸し菊川茶の茶葉は、ふつうより長く蒸すぶん、どこかやわらかくて、でも芯がある。
- 湖西市 新居関跡の石垣に手を当てると、江戸の東海道がここで水に断ち切られていたことを、ひんやりとした感触で思い出すんですよね。
- 御殿場市 霧が低く垂れこめる朝、富士山の裾野はしんと静かなんです。
- 静岡市 駿府城公園の石垣に手を触れると、ここが江戸時代の初めに大御所政治の中心だったことが、すこしだけ体に入ってくる気がするんです。
- 島田市 茶畑と宿場町が、ひとつの町の中に重なっているんですよね。
- 清水町 地面の割れ目から、水がしずかにあふれ出している。
- 下田市 伊豆急下田駅の黒船をかたどった駅舎を抜けると、山と海とが思ったよりも近くて、すこし驚くんですよね。
- 裾野市 黄瀬川の水が、ゆっくりと市街地のかたわらを流れていく。
- 長泉町 鮎壺の滝は、富士山が一万年かけて流した溶岩の上を、いまも水が削りながら流れているんです。
- 西伊豆町 仁科の漁港に塩かつおの匂いがある、と知ったとき、この町のことがすこし好きになるんですよね。
- 沼津市 沼津港の朝、アジの干物を干す作業台のそばを通ると、潮と風がいっしょになった匂いが鼻をくすぐるんです。
- 浜松市 ヤマハや河合楽器が生まれた街で、楽器の音というのは、ふだんの暮らしの底にそっと敷かれているものなんですよね。
- 東伊豆町 天城山の南東麓が、ほぼそのまま海へ落ちていくような地形なんですよね。
- 袋井市 厄除だんごを買って帰る人の列が、法多山尊永寺の参道にふつうにある、そういう土地なんですよね。
- 藤枝市 朝ラーメンの湯気が、まだ静かな商店街にたちのぼる。
- 富士市 海抜ゼロメートルの田子の浦から、富士山の頂きまでを一つの市が抱えているというのは、地図で見るとちょっとびっくりするんですよね。
- 富士宮市 湧玉池の水が、どこまでも透けて見えるんですよね。
- 牧之原市 茶畑と海が、こんなに近くにある場所って、あまりないんですよね。
- 松崎町 なまこ壁の白と黒が、ふだんの町並みにそのまま残っているんですよね。
- 三島市 湧き水が、ふだんの道のすぐそばを流れているんです。
- 南伊豆町 リアス式の岬が折り重なるその先に、下賀茂温泉の湯けむりがひっそりとあがっている、そういう土地なんですよね。
- 森町 駅が点々と並ぶ小さな町に、友田家住宅の古い屋根がひっそり残っていて、それがなんだか、この土地のぐあいをそのまま教えてくれる気がするんです。
- 焼津市 港のそばを歩くと、魚のにおいがふだんの空気にまじっていて、それがここでは当たり前なんですよね。
- 吉田町 大井川の河口から駿河湾へ向かう風は、どこかすこし潮とレタスの青さが混じっているような気がして、それがこの町の空気なんですよね。