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この場所の物語
鮎壺の滝は、富士山が一万年かけて流した溶岩の上を、いまも水が削りながら流れているんです。幅のひろいその段差を前にすると、自分が立っているこの土地の「底」に何があるか、すこし想像したくなる。
長泉町の北西、駿河平と呼ばれる高原の一角にクレマチスの丘があって、ベルナール・ビュフェ美術館をはじめとした文化施設が、工場や住宅地とは別の呼吸をしている。南側には東レや協和キリンの工場が並び、静岡県立静岡がんセンターが医療の核として根を張る。ふだんの暮らしを支えるものと、すこし余白のある時間を使うものが、ひとつの町のなかにちゃんと同居しているんですよね。
下土狩駅の前にある町民図書館で郷土資料をめくったり、割狐塚稲荷神社の溶岩塚の上に立ったり、あるいは四ツ溝柿やあしたか牛を手に入れたりしながら、この土地の「層」を少しずつ読んでいく。東海道新幹線の三島駅がすぐそこにあるから、どこかへ出かけるのも、戻ってくるのも、気持ちよくできる。工業の町、と一言でいうには、この場所はずいぶんいろんな顔を持っているんだなあ、と思います。
静岡県長泉町に泊まる