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天童・人間将棋
将棋の駒が、人間になる。 山形・天童。日本で最も多くの将棋の駒を生産する街。将棋の産地だから、こういう祭りがある。 人間将棋は、桜山の斜面を将棋の盤に見立て、武者装束の人たちが…
将棋の駒が、人間になる。
山形・天童。日本で最も多くの将棋の駒を生産する街。将棋の産地だから、こういう祭りがある。
人間将棋は、桜山の斜面を将棋の盤に見立て、武者装束の人たちが将棋の駒を演じる。プロ棋士が実際に指す指し手に合わせて、人間が移動する。
将棋を知らなくても、楽しめる。武者が動く。観客が歓声を上げる。桜と武者の組み合わせが、山の上で展開される。
天童の将棋はシリアスだ。産地の誇りがある。でもこの祭りは、その誇りを祝祭に変えている。
産地が産地らしく、自分たちの文化を遊んでいる。
そういう祭りが、好きだ。
4月の天童、桜と将棋の山へ。
橋の欄干に、将棋の駒がそっと埋め込まれている。天童の道を歩くと、そういうさりげないものに、ちょいちょい出会うんです。将棋駒の産地として積み上げてきた時間が、モニュメントというより、ふだんの風景の中にしみ込んでいる感じで、それがいいんですよね。
天童駅から歩いて十分ほどのところに天童温泉街があって、内陸盆地特有の寒暖差のある土地に、湯がある、という組み合わせは、すこし考えるとありがたいことだとわかります。出羽桜酒造は1892年から清酒を醸してきた蔵で、その隣に出羽桜美術館があり、李朝の工芸品や斎藤真一の絵画を静かに見ることができる。酒と美術と温泉が、徒歩圏にまとまっているのは、長い時間をここで過ごす人にとって、じわじわとうれしいことだと思うんです。
舞鶴山には天童城の城址があって、毎年四月下旬には人間将棋が行われる。プロ棋士と人が盤の上に立つ、あのふしぎな光景は、訪れた人がはじめて見ると、しばらく言葉を失うんじゃないかな。西沼田遺跡では1500年前の農村集落の跡が復元されていて、勾玉づくりの体験もできる。そういう、手を動かしながら土地の記憶に触れる時間が、天童にはちゃんとあるんです。
山形県天童市に泊まる