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この場所の物語
鉄を打つ音が、この土地の記憶の底に流れているんですよね。安来の地は、たたら吹きと呼ばれる製鉄の技が古くから根づいていて、和鋼博物館に足を踏み入れると、玉鋼をつくる道具や赤羽刀が、ふだんの暮らしのすぐそばに並んでいる。鉄と人の関係が、展示ケースの中だけじゃなく、この町の空気にまで染み出しているような感じがするんです。
足立美術館の庭は、砂と石と植物だけで、ここまでのものができるんだなあ、と、ただ静かに見ていたくなる。横山大観の日本画が並ぶ館内から庭を眺めると、絵と庭がひとつながりになっていて、どこからが絵でどこからが外なのか、すこし、ふしぎな気持ちになります。
広瀬温泉のある旧広瀬町あたりは雪の深い地域で、冬の滞在は、自分の内側に向かう時間をたっぷりもらえる。広瀬絣センターでは、伝統の織物が今も手仕事で続いていて、一枚の布がどれだけの手間の上にあるかを、目の前で確かめられるんです。安来梨や広瀬和紙など、土地が育てたものを手に取りながら、ここに長くいたら、ものの来歴をもっと丁寧に考えるようになるかもしれない、と思う。
島根県安来市に泊まる