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この場所の物語
湯けむりが、坂の途中でふっと立ちのぼっているんですよね。別府では、それがふだんの朝の景色で、だれもとくに驚かないんです。
街の東は別府湾で、西は鶴見岳の火山がどんと控えていて、その斜面のあちこちから温泉が湧き出している。堀田温泉や明礬温泉のような穴場の湯を一つひとつ訪ねていくと、泉質も雰囲気もそれぞれちがっていて、同じ街の中に何種類もの「湯の顔」があるんだなあ、と気づきます。竹瓦温泉の入母屋破風の外観は、近代化産業遺産にも認定されていて、銭湯のような気軽さで入れるのに、建物の佇まいがなんとも堂々としている。
別府竹細工や別府つげ細工といった手仕事が今も続いていて、博物館に入れば大分香りの博物館のように、ちょっと思いがけない展示に出会えたりもします。地獄蒸しや別府冷麺を昼に食べて、午後は由布川峡谷の方へ散歩に出かけて、夕方にまた湯に入る、そういうリズムで一日が組み立てられる場所なんです。長くいるほど、街の重なりがすこしずつ見えてくる感じがして、いいんですよね。
大分県別府市に泊まる