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この場所の物語
和紙を幾重にも貼り重ねて灯りを宿す山鹿灯籠の細工は、ひとつ手に取ると、職人の指先がどこを通ったか、なんとなくわかるんですよね。山鹿灯籠民芸館で制作実演を眺めていると、ふだんの暮らしの中に工芸が溶けているこの土地の気質が、すこしずつ見えてくる気がします。
さくら湯の木造の軒下に荷物を置いて、菊池川流域の盆地に沈む夕方をぼんやり過ごす、そういうひとときが、山鹿ではごくふつうに手に入るんです。平山温泉も、山鹿やまが温泉も、江戸のころから湯治場として人を受け入れてきた土地の蓄積が、建物の木の色やお湯の温度にちゃんと残っています。
八千代座は1910年に建てられた芝居小屋で、重要文化財でありながら今も演技会の舞台として使われているんです。熊本県立装飾古墳館では岩原古墳群を間近に見ながら勾玉作りの体験もできるし、国見山を北に仰ぐこの盆地には、古代から積み上がってきた層の厚さがある。和栗や来民の渋うちわを手に取りながら、そういう土地の奥行きをゆっくり確かめていくのが、ここでの時間のいちばん正直な使い方だと思います。
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