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この場所の物語
うたせ船が、八代海の朝の水面をゆっくり渡っていく。その船の形が、この町の時間の流れをそのまま表している気がするんですよね。薩摩街道の宿場として栄えた佐敷の地に、今も佐敷城跡が残っていて、ふだん散歩しながらそこを通り過ぎると、江戸の往来と自分の足音が、どこかでつながる感じがする。
デコポンや甘夏の畑が、海側の斜面にずらりと並んでいて、海と山がほんとうに近い距離で暮らしを作っているんだなあ、と気づく。井牟田や牛ノ水の漁港に並ぶ船と、丘の上の柑橘畑が、同じ景色の中に収まっているのが、この町のおもしろいところで、どちらかだけじゃない、という豊かさがある。湯浦温泉や計石温泉があるから、PC仕事の合間に湯に入って、また机に戻る、という一日がちゃんと成立するんです。
星野富弘美術館には、詩人であり画家でもある星野富弘の作品が並んでいて、その静けさが、この町のどこかに似ている。肥薩おれんじ鉄道の駅が町内にいくつもあって、車がなくても少しずつ動ける。タチウオや足赤海老を買える場所が、生活の延長線上にある、そういうふだんの手ごたえが、ここにはあります。
熊本県芦北町に泊まる
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