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この場所の物語
フェリーとしま2が鹿児島港を出て、黒潮の上を九時間かけて走りつづける、その長さそのものが、十島村への入り口なんですよね。
島々は南北に長くつらなっていて、口之島牛がのんびり草を食む丘があれば、悪石島ではボゼ祭の仮面が夜の浜をゆく。御岳の稜線と、城之前の漁港の静けさと、小宝島の源泉温度九十度以上という自噴の湯と、それぞれの島がまるで別の国みたいに、ちがう顔をもっているんです。
トカラ馬やトカラヤギが島の暮らしにふつうに混じっていて、週に二便のフェリーが生活の時計がわりになっている。中之島天文台の反射望遠鏡が夜空に向いているそのそばで、島の人たちはただ、ふだんの一日を積み重ねている。そういう場所に、しばらく身を置いてみると、自分の暮らしのテンポが、すこしだけ変わってくる気がするんですよ。
平家の落人伝説が息づく、とデータには書いてある。でも実際に島に立てば、伝説よりも、潮の音と、フェリーの汽笛の間隔の長さのほうが、ずっとリアルに迫ってくるんだろうなあ、と思います。
鹿児島県十島村に泊まる
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