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この場所の物語
羊のまちと呼ばれるのは、看板だけじゃなくて、丘の上にほんとうに羊がいるからなんですよね。「羊と雲の丘」でサフォーク種がのんびり草を食んでいる光景は、なんというか、ちゃんと暮らしの地続きにある風景で、観光用に整えられた感じがしない。道の駅で売っているサフォークせんべいや天サイダーを手に取ると、この土地が羊と甜菜糖をずっと丁寧に育ててきたことが、てのひらに伝わってくるんです。
冬になると、自動車メーカーの寒冷地試験場が本格的に動き出す。マイナス三十度を下回ることもある盆地の寒さを、スタッドレスタイヤの開発に使っているというのは、なんだかこの土地らしい逆転の発想で、いいなあと思います。屯田兵村として開かれた歴史が士別市立博物館に移築保存されていて、その重さと、現代の試験場産業の静けさが、おなじ町の空気の中にある。
天塩川と北見山地と天塩山地に囲まれた盆地の地形は、ふだんの散歩コースにも、スポーツ合宿の拠点にも、どちらにもなれる器の広さがある。推定樹齢千年以上のイチイの巨木「祖神の松」が、そのぜんぶをずっと見てきたんだと思うと、すこし、ふしぎな気持ちになります。
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