ONSEN
熊本県
山鹿温泉
Yamaga Onsen
温泉
湯船に手を差し入れると、ぬるりと指のあいだをすべる、やわらかな感触があるんです。山鹿温泉のアルカリ性の湯は、そういうふしぎなやさしさを持っている。平安の時代にはもう人が浸かっていたというから、この土地の時間はずいぶん長く、ゆっくり流れてきたんだなあ。
江戸のころには宿場町として人が行き来して、「たらいが要らないほど湯が豊か」なんて言い方をされていたそうです。いまも街なかに残る共同湯の「さくら湯」は、道後温泉本館の棟梁が手がけた建物を復元したもので、ふだん着のまま歩いてふらっと入れる場所なんです。
すぐそばには明治に建った芝居小屋の八千代座があって、泊まる宿から下駄で歩ける距離に暮らしと芸能がすっと並んでいる。長く滞在するなら、この「街のなかの温泉」という距離感がちょうどいい。拠点として暮らすとしたら、菊池川のほとりに静かな日常があることに気づくはずです。
訪日の旅人にとっては、観光地として整えられすぎていない、日本の町がそのまま湯と一緒にある風景が、すこし得がたいものに映るんじゃないかと思うんです。
ONSEN
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