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この場所の物語
急峻な斜面に、半田素麺の白い糸が干されている風景は、この土地の暮らしのかたちをそのまま見せてくれるんですよね。吉野川の南側、剣山の山ふところにあるつるぎ町は、傾斜地農耕という知恵が世界農業遺産に認められた場所で、斜面を生かすことを何百年もかけて覚えてきた人たちの場所なんです。道の駅貞光ゆうゆう館に立ち寄ると、ゆずやほし柿が棚に並んでいて、山の季節がそこに詰まっているような、ちょっとうれしい気持ちになります。
赤羽根大師のエノキは、幹のまわりが一抱えどころじゃない、国の天然記念物に指定された巨木で、樹齢八百年というのはデータとしてではなく、目の前に立ったときにようやく体でわかるものだと思います。一宇峡の渓谷を歩いたり、鳴滝の三段の落差を見上げたりしていると、「静かさ」というより「深さ」という言葉のほうがしっくりくる気がします。
剣山登山リフトで標高千七百五十メートル近くまで上がれるので、山の中に長くいたい人には、ここを拠点にして何日でも過ごせるんです。川見堂で毎年八月に行われる踊り念仏は、この土地の人たちが長いあいだ続けてきた祭事で、旅の途中にその日に居合わせたなら、それはかなりのことだと思います。山深いけれど、ふだんの暮らしの匂いがちゃんとある場所、というのがつるぎ町の手触りなんですよね。
徳島県つるぎ町に泊まる
この場所の中身
この地に重なるもの
- 赤羽根大師のエノキ
- 剣山
- 八面山
- 貞光
- 阿波半田
文化財
自然公園
山
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