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この場所の物語
温泉パンのやわらかさを、道の駅きつれがわで手に取ったとき、この町のぐあいがすこしわかった気がするんですよね。
鬼怒川と荒川の水を引いた水田が広がり、氏家駅から宇都宮まで十五分ほどという距離感が、ここでのふだんの暮らしをほどよく支えてくれているんです。東京から新幹線でなくても来られる、あのちょうどいい遠さも、いいなあと思う。
喜連川温泉の湯が複数の施設に引かれていて、宿に泊まっても、日帰りで立ち寄っても、それぞれの使い方ができるのが、長く滞在するときにはありがたいんです。お丸山公園には喜連川城址があって、シャトルエレベータで丘に上がると、城下町と水田地帯が一望できる、すこしふしぎな体験ができるんですよ。
さくら市ミュージアムには近代日本画家・荒井寛方の作品が収められていて、こういう場所に腰を落ち着けた画家がいたんだなあ、と静かに考えるひとときがある。喜連川神社の天王祭で知られる暴れ神輿と、水田の静けさと、温泉パンのやさしさが、同じ町に並んでいる——そのとりあわせが、この土地の手触りそのものだと思うんです。
栃木県さくら市に泊まる