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この場所の物語
周防灘から山国川をさかのぼると、海の町と渓谷の町が、ひとつの地名のなかにすっぽり収まっているのがわかるんですよね。小祝や今津の漁港で揚がるハモと、南の耶馬渓で摘まれた耶馬渓茶が、同じ食卓に並ぶ。そういうふところの深さが、中津の日常にはあるんです。
福澤諭吉旧居や村上医家史料館をぶらぶら歩いていると、この城下町が蘭学や医学をごく当たり前に育ててきた土地だということが、じわりと伝わってきます。歴史を「見にいく」というよりも、ふだんの散歩道に史料館がある、という感じで、暮らしの中に学びがそっと置かれているんです。PCを開いて仕事をしながら、昼休みに中津城の石垣まで歩いていける、そういうぐあいの町です。
耶馬渓まで足を延ばすと、今度は渓谷の石肌と木々が迎えてくれて、八面山金色温泉や守実温泉でひと息つくこともできます。から揚げや豊後牛といった食の手がかりも、旅の記憶をしっかり手元に残してくれる。海と山と城下町という三つの顔を、一日のうちに少しずつ触れられる、ふしぎでいいなあと思う土地です。
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