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この場所の物語
高瀬川の水が、わさびの根をひたひたと洗っている。その清流が北アルプスの東麓から湧き出て、扇状地のあちこちに細い筋を引いている村が、松川村なんですよね。稲とりんごの畑が続く田園のなかに、安曇野ちひろ美術館がひっそり建っていて、ちひろの絵とおなじくらい、空気がやわらかいんです。
美術館の隣には安曇野ちひろ公園があって、体験農園でちょっと土を触ったり、トットちゃん広場でぼんやりしたりする時間が、ふだんの午後みたいにそこにある。すずの音ホールの図書館で本を開いて、夕方にすずむし荘の天然ラドン温泉に浸かる、そういう一日の組み立てが、ここではごく自然にできてしまうんです。
観松院には飛鳥時代の銅造菩薩半跏像が安置されていて、それが長野県最古の仏像だと知ると、この村の地面の厚みをすこし感じます。有明山を仰ぎながら、道の駅安曇野松川で信州サーモンやりんごを手に取ると、ここが農の村であることをあらためて思い出す。遠くからやってきた人も、長くいる人も、それぞれのやり方でこの水と土に触れながら、自分のペースをみつけていけそうな、そういう村なんだなあと思います。
長野県松川村に泊まる