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この場所の物語
小丸川の水音が、どこにいても耳の端に届いてくる町なんですよね。尾鈴山地の懐に抱かれた木城町は、山と川と滝がそのまま日常の風景になっていて、祇園滝まで歩く道すがら、ふだんの散歩がいつのまにか深山のなかに迷い込んでいたりする。
長くいるほど、この場所の重なりに気がついてくる。武者小路実篤が理想郷を求めて開いた日向新しき村と、高城城跡に刻まれた戦国の激戦の記憶が、おなじ土地にしずかに並んでいるんです。思想と歴史がすこし不思議な距離感で同居している、それがこの町の素の顔だと思う。
木城温泉館 湯ららの露天に浸かりながら、自分の暮らしをどこに置くか、ぼんやり考えるのにちょうどいい時間があって、公共交通は町営バスだけという事実が、むしろ「ここで暮らすとはどういうことか」をはっきりさせてくれる気がする。木城えほんの郷という絵本の文化拠点がこの山深い場所にあることも、なんだかこの町らしくて、いいなあと思う。
宮崎県木城町に泊まる