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この場所の物語
水田の向こうに、ひらたい遺跡が静かに横たわっている。斎宮跡と呼ばれるその場所は、奈良の時代から南北朝のころまで、皇女である斎王が執務した場所で、大型の掘立柱建物群の跡が、今も地中にそのまま残っているんですよね。斎宮歴史博物館に入ると、文献史料と考古資料が丁寧に並べられていて、ふだんは見えていない時間の層を、すこしずつ手繰り寄せるような気持ちになります。
さいくう平安の杜を歩くと、遺跡の広さがからだでわかる。伊勢平野の真ん中、笹笛川がゆるく北へ流れる低湿帯に、これほどの空間がある、というのが、いいんですよね。PC を開く場所を探しながら長く滞在するひとも、一日だけ立ち寄るひとも、この土地の「広さと静けさ」は、たぶん同じように受け取れる。
5月から6月のはじめ、斎宮のハナショウブ群落に濃紫色の花が開くころ、湿地はすこし表情を変えます。国の天然記念物に指定されたノハナショウブの自生地が、遺跡のすぐそばにある、というのがふしぎでいいなあ、と思う。古代の格式と、野の花の素朴さが、ここでは同じ地面の上に並んでいるんです。
三重県明和町に泊まる
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