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この場所の物語
鈴鹿山脈から流れ下る三滝川のそばに、湯の山温泉の湯気がある。古い峠道——千種越えや八風越えを行き交った保内商人たちが、この土地を通り道として使っていたことを思うと、ここはずっと「途中の場所」でありながら、同時に「立ち止まる場所」でもあったんだなあと、なんだかうれしくなるんです。
萬古焼の窯元が今も町に根を張っていて、毎年の窯出市では焼き物が並ぶ。パラミタ・ミュージアムでは現代アートを静かに見て、そのまま朝明渓谷を歩いて、夕方に温泉に入るというふだんの一日が、ここではごく自然に成り立つんですよね。リモートで仕事をしながら、週に一度その流れを繰り返すような暮らしを想像すると、ちょっとうらやましくなる。
田光のシデコブシが咲く湿地のそばに、807年に最澄が建てた三嶽寺がある。信長の焼き討ちから復興した禅林寺もある。この土地の歴史は、何度も壊れて、また立ち直るものだったんです。そういう重なりのある場所に、御在所ロープウェイで空へのぼる観光客の姿が混ざっているのが、菰野町のふしぎでいいなあというところで、訪れた人が「ここ、なんか深いな」とすこし立ち止まるのが、よくわかる気がします。
三重県菰野町に泊まる
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