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この場所の物語
早明浦ダムの水面が、かつての村の暮らしを静かに沈めたまま、いまも山のあいだで光っているんですよね。大川村は、四国山地の北のほうに、ひっそりと、でも確かに、息をしている。
小松地区に役場も診療所も農協も、ぎゅっと集まっているのが、この村のふだんの暮らしの骨格で、そこに行けば村の一日がだいたいわかる、そういうぐあいになっているんです。白滝鉱山が動いていたころの賑わいは、いまは地名と記憶のなかにあって、かわりに山の静けさと、大川黒牛や土佐はちきん地鶏を育てる人たちの手仕事が、村の輪郭をつくっている。
ここに長くいると、「少ない」ということが、不便だけじゃなくて、ある種の余白でもあることに気がついてくるんです。点在する16の集落を結ぶ道を走りながら、お茶の香りが風に混じっていたりすると、ああ、こういう場所がまだあるんだなあ、と、すこしうれしくなる。
高知県大川村に泊まる