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この場所の物語
門倉岬の断崖に立つと、海の向こうからポルトガル人が船を着けた1543年と、ロケットが空へ向かう現在が、おなじ水平線の上に重なって見えるんですよね。種子島の南端にあるこの町は、鉄砲伝来紀功碑と宇宙センターの発射台という、ちょっと信じがたい組み合わせをふつうに抱えていて、その感覚がなんともいいんです。
JAXA種子島宇宙センターの広大な敷地は、ロケットや衛星が島間港から陸路で運ばれてくるところから始まる、地続きの仕事の場でもあって、技術者たちのふだんの暮らしがこの町の空気に混じっています。河内温泉は南種子町コミュニティバスの終点にあって、打ち上げの日もそうでない日も、町の人たちがすこし疲れた体を持ってくる場所なんです。
前之浜自然公園の砂浜を歩きながら、インギー地どりのことを考えるのもいい。1894年に難破したドラメルタン号がこの島に残していった鶏が、今も「インギー鶏」として育てられているというのは、歴史がそのまま食卓に座っているみたいで、ふしぎでいいなあと思います。コシヒカリ米と地どりと、広田遺跡ミュージアムの静かな展示と——この土地は、遠い過去と遠い未来を、ごく自然なぐあいで隣に置いているんですよ。
鹿児島県南種子町に泊まる