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この場所の物語
宗谷岬から北の海を見ると、水平線の向こうにロシア領がある、というのが、ここでのふだんの話なんですよね。
稚内市の地方卸売市場には、沖合底曳網漁業で獲れたものが毎朝並ぶ。ホタテガイ、ウニ、ミズダコ——名前を並べるだけで、海の底の冷たさが伝わってくるようで、いいなあ、と思うんです。宗谷黒牛を育てる宗谷岬肉牛牧場が丘の上にあって、漁と酪農が同じ空の下で動いている、というのが、この土地の暮らしのぐあいをよく表している気がします。
風力発電の風車が丘陵に並んでいて、市内で使う電力のほとんどを再生可能エネルギーで賄っているというのは、辺境の地がそのまま実験の場になっているようで、すこしふしぎでいいなあ、と感じます。宗谷丘陵の周氷河地形は北海道遺産にも選ばれていて、スケールの大きな地面の上を、ただ歩いたり、散歩したりするだけで、何かを考えるより先に体が動く感じがするんです。
稚内空港から札幌や東京へ飛べる。でも、ここに滞在していると、どこかへ急いで戻ろう、という気持ちが、すこし薄くなっていくんですよね。
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