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この場所の物語
遠賀川の縁に沿って、かつての炭鉱の記憶がひっそりと地面に残っている町なんです。古月横穴の横穴群を歩くと、古墳時代の人たちがここに暮らしていたことが、ふと実感としてやってくる。
産業の顔がひとつじゃないのが、この町のおもしろいところで、自動車関連の工場と、巨峰ぶどうの畑が、同じ地平線の上にあるんですよね。ブドウ狩りの季節には、ふだん工場のそばを通り過ぎるだけの道が、すこし違う表情を見せてくれます。
鞍手駅から北九州市や福岡市へ出られる距離感が、ちょうどいい「遠さ」をつくっていて、毎日の通勤も、週に一度の街への用事も、どちらも無理なく手が届くぐあいです。六ヶ岳の山頂から響灘の工業地帯を眺めると、この町が長い時間をかけて産業の衣を着替えてきたことが、地形ごと見えてくる気がします。
長谷寺の木造十一面観音立像は、年に二回だけ開帳される、という静かな約束ごとを守り続けていて、その律儀さが、鞍手町という場所の体温に、どこかよく似ているなあと思うんです。
福岡県鞍手町に泊まる