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この場所の物語
那岐山の稜線が、ふだんの暮らしの背景にある、というのがここの手触りなんですよね。台風の季節には広戸風と呼ばれる強風が吹き下ろして、山が生きているということを体で知ることになる。葉わさび寿司を口にするときも、その山の水と土の話をしている気がして、すこしうれしくなります。
磯崎新が設計した奈義町現代美術館は、作品と建物がそのまま一体になっていて、アートを「見に行く」というより、空間の中に入り込む感じなんです。となりには図書館があって、本を読みながら、なんとなく美術館のことを考えたりできる。そういう複合の場が山村にあることが、ちょっとふしぎでいいなあと思います。
地面の下には一千六百万年前のビカリア化石が眠っていて、なぎビカリアミュージアムに行くと、この土地が海だったころの話を静かに教えてもらえる。菩提寺の大イチョウは樹齢九百年とされていて、法然がここで修行したという記録も残っている。山と化石と現代美術が、同じ町の中にごく自然に並んでいる、そのぐあいが奈義町という場所の素の顔なんだと思います。
岡山県奈義町に泊まる