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壬生の花田植
田植えが、芸能になる。 広島の山あいの村。初夏の日曜。「花田植」。 色とりどりの花鞍で飾った牛が、水田を掻く。何十頭も。泥のなかへ。 笛、太鼓、ささら。囃子に合わせて、菅笠に絣の早…
田植えが、芸能になる。
広島の山あいの村。初夏の日曜。「花田植」。
色とりどりの花鞍で飾った牛が、水田を掻く。何十頭も。泥のなかへ。
笛、太鼓、ささら。囃子に合わせて、菅笠に絣の早乙女たちが、横一列。一本ずつ、苗を植えていく。
起源は中世。豊作を祈る、農の儀礼である。そして、苦しい労働を祝祭に変える知恵でもあった。
田が、花畑のように見える。牛の背に、花が揺れる。
機械が田を植える時代に、人と牛が手と足で植える。
速いからではない。土地に、季節に、頭を下げるため。
ひと粒の米の前で、人はこんなにも丁寧になれる。
ユネスコ無形文化遺産。
中国山地の山並みが島根との県境まで続いて、その稜線のあいだに、雪の重さを知っている暮らしがある。臥龍山や雲月山のふもとに積もる雪は、冬のあいだ、この土地の日常をゆっくりと塗り替えていくんですよね。
芸北高原大佐スキー場やユートピアサイオトに人が集まる一方で、少し山道を入ると、吉川元春館跡の高さのある石垣がひっそりと残っていたりして、そのギャップが、なんだかいいんですよね。戦国の世に毛利元就の次男がここに隠居の館を構えたという事実は、この土地が昔から人の拠り所になってきたことを、石の重さで教えてくれる。
芸北民俗博物館には、湖底から移築した中門造りの家屋と、農機具が並んでいて、ふだんの暮らしの道具がこんなに雄弁なのかと、すこし立ち止まる。壬生の花田植や本地の花笠踊りといった祭事も、農と山と人のつながりが途切れずにいることを、毎年の動きで示している。ゆずや八重の露といった土地の産物を手にとりながら、広島駅からバスで二時間という距離が、むしろちょうどいい遠さに思えてくるんです。
広島県北広島町に泊まる
この地に重なるもの
- 吉川氏城館跡 駿河丸城跡 小倉山城跡 日山城跡 吉川元春館跡
- 吉川元春館跡庭園
- 旧万徳院庭園
- 大朝のテングシデ群落
- 竜山八幡神社本殿
- 西中国山地
- 臥龍山
- 天狗石山
- 雲月山