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この場所の物語
粟饅頭の甘い匂いが、圓蔵寺の石段のあたりにうっすら漂っているんですよね。あかべこ通りの店先には、赤と黒の首振り牛がずらりと並んでいて、それを眺めながら歩くだけで、この町が信仰と商いをいっしょに育ててきたことが、なんとなく伝わってくる。
只見川沿いの柳津温泉と、源泉が8本もある西山温泉とが、それぞれ別の顔を持っているのがいいなあ、と思うんです。柳津は門前の賑わいの延長にある湯で、西山は家族経営の旅館がひっそり並ぶ湯治の場。どちらに泊まるかで、ふだんの暮らしの続きにしたいのか、いったん立ち止まりたいのか、自分の気分がわかる気がします。
砂子原カルデラの熱を使って発電し、只見川の水でも電気をつくっている、という話は、この土地の地べたの豊かさをそのまま教えてくれます。斎藤清美術館に飾られた版画の、あの静かな会津の冬の色も、この火山と川と雪の土地から生まれたものなんだなあ、とすこし、ふしぎな気持ちで眺めることができるんですよ。
福島県柳津町に泊まる