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この場所の物語
桐箪笥を削る音が、どこかの工房から聞こえてきそうな、そういう町なんですよね。春日部駅で東武伊勢崎線と野田線が交わるこの場所は、江戸時代には日光街道の粕壁宿として人や荷が行き交い、いまも東京メトロへの直通列車が日常の足になっている。遠くに出かけるのも、ふだんの買い物も、どちらもちゃんとできる、という安心感が、暮らしの土台になっているんだと思います。
牛島のフジは、樹齢千年以上の紫藤の巨木で、国の特別天然記念物に指定されています。それがふつうに市内にある、というのが春日部のすこし、おおらかなところで、神明貝塚の縄文の記憶も、春日部市郷土資料館の棚の中に、ごく自然に収まっている。大凧あげ祭りや春日部藤祭りも、観光のためにつくられた行事というより、土地の人がずっとやってきたことの続きとして、毎年やってくる感じがします。
中川低地の平らな地形の上に、暮らしがゆったりと広がっているこの場所は、麦わら帽子や羽子板といった手仕事の産地でもあって、工芸と農と交通が、ふだんの景色の中にいっしょに混ざっているんですよね。春日部市立医療センターや三館体制の図書館があることも、長くいる人間には、じわじわとうれしい話です。
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