温泉
この場所の物語
湯に手をひたすと、すこし驚くほどの塩気が肌にまとわりつくんです。約一千万年前の海水がそのまま地中に閉じこめられて、いまも湧きつづけているという、ちょっと気が遠くなるような話なんですよ。松之山温泉の湯は「薬湯」と呼ばれてきたけれど、それは効能を誇るというより、からだが自然にゆるんでしまう、そういう手ざわりのことなんだなあ。
温泉街はほんとうに小さくて、共同浴場の鷹ノ湯のまわりを歩いても、すぐにぐるっと一周できてしまう。登録有形文化財の旅館が静かに建っていたりして、時間がゆっくり堆積している場所だと感じるんです。冬になれば雪がひとの背丈の何倍も積もって、あたりがまるごと白に沈む。
長く泊まるなら、里山ビジターセンターにコンドミニアムもあって、暮らすように浸かる日々が成り立つんです。多拠点で拠点を探しているひとには、この静けさそのものが資源になる。訪日の旅人にとっては、化石海水という世界でもふしぎな湯の由来が、ことばを超えてからだに届くはずなんですよ。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
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