温泉
この場所の物語
湯に向かう川、という意味のことばが、この場所にはずっと残っているんです。アイヌ語で「湧駒別」と呼ばれた沢筋をたどるようにして、ひとは標高千百メートルの高原にたどり着く。そこに静かに湧いているのが、カルシウムやマグネシウムを含んだ硫酸塩の湯なんですね。
歓楽の気配がまるでないのが、この温泉地のふしぎなところで、国立公園のなかに宿がぽつぽつと並んでいるだけなんだなあ。ロープウェイに乗れば、さらに上の世界に出られて、姿見の池のあたりまで歩くこともできる。長く泊まるほどに、朝の空気や夕方の光のちがいが肌でわかるようになるんです。
多拠点で暮らすひとにとっては、旭川からバスが通年走っているという足もとの安心がうれしい。訪日の旅人には、ふだんの日本とはまるで異なる、本州の高山に匹敵する気候のなかで湯に浸かるという体験が、ちょっとほかにない時間になるはずです。
ここでは観光をするというより、ただ静けさのなかに身を置く、それだけのことをしに来るんです。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
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