温泉
この場所の物語
渓谷をわたる風が、すこし湿り気を帯びているんです。三滝川のせせらぎが足もとから聞こえてくるこの場所は、七百年代に鹿が傷を癒やしたという「鹿ノ湯」の伝承をいまも静かに抱えています。アルカリ性のラジウム泉は、肌にやわらかくて、ふだんの疲れがすうっとほどけていくような、そういうお湯なんですよ。
元禄の頃にいちど復興し、三嶽寺が建てられ、やがて近鉄の線路が延びてきて、名古屋の奥座敷とよばれるようになった。けれど歓楽街にはならなかったんだなあ。十四軒ほどの宿が渓谷に寄り添うように並ぶだけで、歩くたびに木々の気配がちゃんとそばにある。
長く泊まるなら、アクアイグニスで焼き菓子を買い、川沿いをぶらぶらする日があってもいい。多拠点で暮らす人には、名古屋まで一時間という距離感がちょうどいいはずです。訪日の旅人には、ロープウェイで山頂へ上がるふしぎな浮遊感と、降りてきてから浸かる湯の温もりの落差が、この土地だけの体験になるんです。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
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