温泉
硫黄のにおいが、着いた瞬間からずっとそばにあるんです。八幡平の山中にぽつんとある一軒宿、後生掛温泉は、地面そのものが生きているような場所なんですよ。泥湯に浸かり、箱蒸し風呂で首だけ出してぼんやりしていると、じぶんの輪郭がすこしずつゆるんでいくのがわかるんです。
ここはむかしから湯治の場所で、ふだんの暮らしの延長みたいに何日も泊まる人がいて、その時間の流れかたがいまも残っているんだなあ。後生掛園地を歩くと、泥がぼこぼこ沸き、噴気がしゅうしゅう上がっていて、地球の内側をのぞいているようなふしぎな気持ちになるんです。
長く滞在するほど、湯と地面と空気がひとつながりだということに気づく、そういう土地なんですよ。多拠点で暮らす人にとっては、生活を手放しにくる場所としてちょうどいい静けさがある。訪日の旅人には、火山と湯治という日本の古い風景がそのまま残っていること自体がめずらしい体験になるはずです。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
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