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この場所の物語
赤銅色の石州瓦が、坂道の両脇にずっと続いているんですよね。吹屋の町を歩くと、弁柄の赤がそこかしこにしみこんでいて、ここで銅を掘り、顔料を焼いた人たちのふだんの暮らしが、壁の色としてそのまま残っているような気持ちになります。
備中松山城は、臥牛山の上に、ほんとうに山の上に建っているんです。秋冬の朝、盆地に雲が溜まって、城だけが雲の上に顔を出す。あの眺めは、写真で見るのとは全然ちがって、自分の足でのぼってはじめてわかる重さがあります。石火矢町の武家屋敷をぬけて、城へ向かう道のりそのものが、この町の時間の積み重なりを体で知るような道のりなんです。
JR伯備線の備中高梁駅を降りると、町はそんなに急いでいない。高梁紅茶を一杯のんで、順正記念館の擬洋風の窓から光が落ちるのを眺めながら、午後をゆっくり使う、そういう時間の使い方がよく似合う町です。備中神楽の発祥地でもあって、祭事のある夜はまた別の顔を見せてくれる。いろんな角度から来て、いろんな時間を重ねたくなる場所なんだなあ、と思います。
岡山県高梁市に泊まる