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この場所の物語
阿武隈川が山地を割るように流れていて、その両岸のほとんどが木々で覆われているんですよね。渓谷沿いにあぶくま駅のホームから眼下を見ると、水の音がそのまま景色になっているような、ちょっとふしぎな気持ちになります。齋理屋敷の蔵が六棟も並んでいるのも、この土地に江戸から明治にかけての商いの厚みがあったことを、静かに教えてくれます。
へそ大根やシルク和紙といった、手のかかる産物が今もここで作られているのが、いいなあと思うんです。火渡り神事が毎年四月に光明院で続いていることも、暮らしの中に修験の記憶がそっと残っているみたいで、日常と非日常の境がゆるやかな土地だなと感じます。
令和元年の台風で町全域が浸水し、十月十二日を「鎮魂の日」と定めたことは、この町を語るときに避けて通れないことです。それでも阿武隈渓谷でいかだ下りが行われ、齋理幻夜の灯りがともる。水と折り合いながら続いてきた暮らしが、今もここにあるんです。
宮城県丸森町に泊まる
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