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この場所の物語
いりこの香りが、急な坂道のあちこちから漂ってくる。観音寺港から定期船で二十五分ほどの伊吹島は、カタクチイワシの煮干し「伊吹いりこ」をつくる島で、網元たちのふだんの仕事がそのまま土地の匂いになっているんですね。瀬戸内海の海底火山が残した断崖と、中央のゆるい台地。歩いていると、漁と加工を中心に回ってきた島の輪郭が、すこしずつ見えてきます。
真浦港のあたりから集落へ上がっていくと、1124年に勧請されたという伊吹八幡神社が静かに建っている。慶長の頃から続く白旗網漁法や、1862年に始まったといういりこ製造の歴史が、看板にではなく、家並みや坂のかたちに残っているのがいいんです。観光地らしい設えはほとんどなくて、ただ漁師の島の日常が続いている。
短い旅で立ち寄っても、いりこの匂いと船の時間にあわせて過ごす一日になる。すこし長く居れば、北浦港の風や、台地の畑、伊吹八幡神社の祭礼のリズムが、ふだんの暮らしの背景にすっと入ってくるんだろうなあと思います。海の向こうから訪ねてくる人にとっては、瀬戸内の小さな島で、煮干しという食文化が今も職人の手で続いている、その手触りそのものが、なかなか他にない出会いになるはずなんです。
伊吹島に泊まる
この場所の中身
島の上にあるもの
- 円上島の球状ノーライト
- 瀬戸内海
- 伊吹島
文化財
自然公園
離島