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この場所の物語
高速船が里港に着くと、山肌が海まで迫っていて、平らな土地のすくなさにまずちょっと驚くんですよね。上甑島と中甑島を結ぶ甑大明神橋を渡ると、白亜紀の地層を背負った島の輪郭が、ふだんの暮らしのすぐ隣にあることに気づきます。長目の浜では砂州が三つの池を海から隔てていて、こんな地形のぐあいって、すこしふしぎなんです。
里の武家屋敷跡には、小川氏の時代から積まれた玉石垣がいまも残っていて、平家の落人伝説やキリシタン文化の記憶が、観光の言葉になりきらないまま土地に染み込んでいる感じがする。八幡神社で十一月に舞われる内侍舞のような行事が、ふだんの島の時間にそっと折り目をつけているんだなあ、と思います。
甑ふれあいバスで島をめぐりながら、宿に戻って本を読んだり仕事をしたりする日々を想像すると、二〇二〇年に開通した甑大橋が下甑島までを繋いでくれているのも心強い。本土からは高速船で五十分ほどの距離で、暮らしの拠点としても、すこし長く滞在する場所としても、はじめての島旅としても、それぞれに違う手触りで受け止められる土地なんです。
上甑島に泊まる
この場所の中身
島の上にあるもの
- 上甑島
離島