温泉
この場所の物語
砂浜をすこし掘ると、手のひらに湯がにじんでくるんです。屈斜路湖畔温泉というのは、そういうふしぎな場所なんですよ。砂湯、コタン温泉、池の湯と、湖のほとりに野湯がぽつぽつと点在していて、どこも大地がじかに湯を差し出しているような手触りがある。
冬になると、その廃湯のおかげで湖面が凍りきらず、白鳥たちがごく当たり前の顔をして浮かんでいるんだなあ。コタン温泉の岩風呂に浸かりながら、そのけはいを眺めるという時間が、ここにはふつうにあるんです。仁伏温泉あたりには源泉掛け流しの宿が何軒かあって、泊まるとなると暮らしに近い滞在ができる。
バスの本数はすくないし、車がないとちょっと不便だけれど、その不便さがそのまま、この土地の静けさを守っている気がします。多拠点で暮らす人にとっては、ふだんの時間を手放すための場所になるかもしれない。海の向こうから来た人には、温泉と野生の鳥がひとつの景色に重なるという体験が、たぶんどこにもない記憶になるんです。
歩いて、浸かって、また歩く。それだけで一日がちゃんと終わる場所なんですよ。
泊まるなら
一日では、たぶん足りない。
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