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この場所の物語
段々畑のミカンが、海に向かってずるずると傾いでいるんですよね。日生港から十五分ほど船に揺られると着く小さな島で、横山農園のミカン狩りは、最盛期には何百人もを受け入れていたという話が、いまの静かな島影とどこかうまく重ならない。日生みかんやせとか、はるみといった名前が並ぶのを見ると、急な斜面と少ない雨のなかで、人がていねいに木を育ててきた時間が思われる。
平地のほとんどない島に、別荘がぽつぽつと三百五十軒ほど点在しているという話も、ちょっとふしぎな景色で、定年を過ぎてから移り住む人がすこしずつ増えているらしい。かつての馬牧場や流刑地、葉タバコの畑、バブル期の別荘開発と、層になった過去が、いまの五十数人の暮らしの下にしずかに沈んでいる。
岡山駅から日生駅までは観光列車La Malle de Boisが走っていて、そこから船に乗り換える道筋になる。瀬戸内海国立公園の東のはしっこで、海水浴場の砂の上から多島美を眺めるような時間は、ふだんの予定表からはみ出した、ちょっと長めの滞在に向いている気がするんです。
鴻島に泊まる
この場所の中身
島の上にあるもの
- 瀬戸内海
- 鴻島
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