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この場所の物語
港に降り立つと、たまねぎを積んだ軽トラックや、柑橘の枝を抱えた人が、ゆっくりと坂を上っていくのが見えるんです。津和地港は中島汽船の高速艇とカーフェリーが寄る、島の外とつながる唯一のくちで、ここから先は、海に向かって家々が肩を寄せ合うように密集している。背後の丘には果樹園、足元の海にはタコや鯛、イワシ。ふだんの食べものが、そのまま島の風景になっているんですよね。
忽那諸島のいちばん西の端、広島湾と伊予灘のあいだに浮かぶこの島は、村上水軍の時代から風待ち港として船を迎えてきた場所で、松山藩主のお茶屋跡の碑が、いまは保育所のそばに静かに残っているのがいいんです。海辺の平和の碑、北岸の八幡神社、そして秋祭り。歴史のあるものと、ふだんの暮らしのあるものが、すこし不思議なくらい同じ目線で並んでいる。
長く居れば居るほど、たまねぎの収穫や柑橘の色づきといった、季節の手しごとに島の時間がついていることがわかってくる。仕事の合間に港まで歩き、フェリーの汽笛を聞きながらコーヒーを淹れるような暮らしも、たぶん成り立つのだろうなあ、と思うんです。遠くから来た人にとっては、松山港からいくつもの島を経て辿りつくその航路そのものが、もう旅のいちばんの中身になっている気がします。
津和地島に泊まる
この場所の中身
島の上にあるもの
- 瀬戸内海
- 津和地島
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